コンテンツへスキップ

知音代表 西村和子が、この度、第九句集「素秋」を上梓しました。

西村和子  第九句集
『素秋』
2025/10/10刊行
朔出版

◆自選12句
湖へ巒気流るる草津月
衣替へて居職の心定まりぬ
袖通さざるままのちの更衣
初鏡齢に嘘はつくまじく
駒返る草やくるぶしふくらはぎ
子へものを書けば遺書めく夜の秋
そののちの秋速かりし長かりし
はつふゆと息吹くやうに独り言
愚かなる人類に年改まる
蛇衣を脱ぎ少年の声太る
冴返る我が身にいくつ蝶番
夢に逢ふ時は壮年明易し

◆あとがきより
前句集以後、令和元年から六年までの作品を集めた。前半は新型コロナの流行で、句会もままならぬ日々の作、最近は以前の暮らしぶりに戻ったが、変わりなく貫いた句作の日々だった。その意味では、この六年は私にとって俳句への思いを確かめ、覚悟を固めた歳月であったと言える。
夫を見送って二十年、私を生かし続けてくれたのは、俳句と、真の仲間たちだった。これからも生ある限り、俳句と共に、俳句のために一日一日を歩んでゆきたい。
人生の春に出会った俳句だが、今や人生の秋も深まったことを実感している。その思いを句集名に籠めた。「素」は白色、無地の意であり、「素心」「素描」「素直」「素手」といった心惹かれる言葉とのゆかりを覚える。
朔出版の鈴木忍さんとは、角川の「俳句」編集長時代からのご縁。共同作業に第九句集が加わったことは、大いなる喜びだ。

令和七年初秋草津にて