ゆうるりと日永を進む万歩計
伊東 晋
「知音」2022年7月号 知音集 より
客観写生にそれぞれの個性を
「知音」2022年7月号 知音集 より
2023年4月以降の例会も、不織布マスクの着用をお願いいたします。
引き続き、基本的な感染防止対策にご協力ください。
例会係
「知音」2022年7月号 知音集 より
「知音」2022年7月号 知音集 より
こののちの四温をたのみ旅仕度
暮れきらぬ雪の伊吹の面構
雪の原越ゆやゆく手の茜空
寒靄や屏風と迫る比良比叡
先斗町出はづれ朧月高し
しづり雪山門直下砕け散り
立春の音漲れり水路閣
満目の冬芽うずうず大銀杏
国境ひ燃えてをるなり鳥帰る
ポケットにいつの半券鳥帰る
鳥雲にマリリンモンローノーリターン
鳥雲に入る誰彼の死の噂
雁行待ちの銀河鉄道二十五時
序破急のまた序破急の春の波
猿真似の猿に笑はれ梅祭
婆婆羅的孤独死はあれ梅二月
揚船の塗り直されて春を待つ
昨夜の豆自転車置場にもこぼれ
七人の小人ころころ蕗の薹
浅草の七味屋今も実千両
観梅や砂糖のやうな雪が降り
春燈娘の美貌母凌ぎ
付添の病院広き余寒かな
三四郎池蝌蚪未だ鴨一羽
寒波来ぬ手錠の腕に針を刺し
田村明日香
蠟梅に日向の色ののり染めし
山田まや
風の音連れて帰りし柚子湯かな
井出野浩貴
人目には気楽な暮し日向ぼこ
井戸ちゃわん
福達磨妊婦のごとく抱へけり
吉澤章子
肥えし子も痩せしも揃ひ屠蘇祝
松井洋子
二日はや足の向くまま浜日和
芝のぎく
お年玉とびきりの笑み返さるる
大村公美
あどけなさ残る巫女より破魔矢受く
政木妙子
うら若き女鷹匠黒ずくめ
成田守隆
都心の灯したたつてゐるクリスマス
吉田林檎
俳縁のつくづく奇縁初句会
松枝真理子
ポインセチア表紙の反りし聖歌集
小池博美
祝箸十膳へ名や墨香る
牧田ひとみ
散紅葉枯山水をささやかす
大橋有美子
放蕩も不犯も詩人星冴ゆる
井出野浩貴
鴨泰然雨を嘆くは人ばかり
藤田銀子
点滴の速度確認初仕事
三石知佐子
スケートの大臀筋に見惚れけり
中野のはら
マフラーをはづして見せるネックレス
田代重光
大寒の頃、真っ向から吹きつける風は一年で一番冷たく厳しい。「追風に乗って」という言葉があるように、順風は追風、逆風は向かい風である。普通なら妨げになるような風を、これこそ我が力になると言って憚らないのは、若さの故か強がりの故か。
ピンチはチャンス、という考え方があるように、厳しい逆風こそ自分の力として乗り切ろうという意志を表した作品。
この暦は日めくりだろう。年末の暦を季語では古暦というが、一年間毎日破いては捨てて来たものが、ある日急に残り少なくなったなあと思った時の実感。それを「心細く」なったと表現している点に情がある。十二月も半ばを過ぎた頃のことだろうか。「にはかに」と言う言葉も、昨日までは気づかなかったことの発見を表している。
図書館の光景だろう。季語から寒々しい空間が伝わってくる。書庫から死者の私語が聞こえてくるとは、鋭敏が感覚である。書庫に収められている本も、現代のものではなく古典であることが語られている。
冬の書庫の静寂の中に身を置くと、この世にない人々の声が聞こえて来るような気がして、背筋がぞおっとする。冬灯も乏しいものに違いない。
「知音」2022年7月号 知音集 より
「知音」2022年7月号 知音集 より
「知音」2022年7月号 知音集 より
「知音」2022年7月号 知音集 より
「知音」2022年7月号 知音集 より