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松枝真理子句集『薔薇の芽』
2016/09/22刊行

◆第一句集
ぐらぐらの歯を自慢してチューリップ
やがて
キャンプから帰りてもまだ歌ひをり
そして
マフラーを後ろできゆつと結ぶ子よ
お母さんと一緒にここまで成長してきた女の子は、これからは一人の女性として自分自身の道を歩み始めるだろう。そして園子と足並を揃えてきたお母さんには新しい地平が見えてくるはずだ。『薔薇の芽』に続く真理子さんの俳句の展開を見守ってゆきたい。
(帯より・行方克巳)

◆行方克巳抄出十句
亀の子の手足てんでんばらばらに
脇見してにこにこ走り運動会
マフラーを無理矢理巻いて送り出し
帰り来て遠足の地図辿りをる
人見知りしても人好きさくらんぼ
浴衣着て甘え上手になりにけり
凍星や悔し泣きの子誉めてやる
秋蝶の芝すれすれにすれ違ひ
赤ちやんがこんなにゐるよ秋日和
五十メートルとぶよと飛蝗見せくれし

栗林圭魚著 『季題拾遺』
2016/1/10刊行

「拾遺」とは、歳時記からあふれ出たあれこれを拾い補うことであると同時に、
季題の「周囲」の世界を展開し解明することでもある。
知的好奇心旺盛な俳句愛好家必読の本。
知っていたはずの季題の意外な側面が見えてくる。
まず、今の季節から読み始めよう。(西村和子氏推薦)

小澤佳世子句集『葱坊主』
2018/9/8刊行

◆第一句集
笑ふ夢見てゐる顔の風邪治る
『葱坊主』はまさに子育て春秋における佳世子さんの奮闘記である。
まことに子供というテーマは身近であってこれほど興味深いものはない。
(帯より・行方克巳)

◆行方克巳選
一ページめくる手袋外しけり
西瓜の種蹠にくつつけ眠りをり
わがままな強情な髪洗ひけり
新妻の居場所探しやトマト煮る
小さな口の大きなあくび今朝の秋
くせつ毛のもさもさ頭葱坊主
十二月主婦の蝦蟇口かさばつて
ぶらんこにつつぱつて人寄せつけず
吾子は泣きコスモスはご機嫌に揺れ
どんぐりを右手に一つ左にも

長 愛輝句集『帰郷』
2015/7/9刊行

帰郷してわが寝間となる夏座敷

第二の人生の六年間で得た七千余句の中からここに四六九句を選んだ望郷のうた。
老いて豊かな日常とは何か
これはその実体験の記である。

知音俳句会代表 行方克巳

鴨下千尋句集『月の客』
(つきのきゃく)

2015/6/28刊行

◆第一句集
人生の先達に捧げられた句は
みずからの足どりと
心の軌跡の表出にほかならない。
妻として母として女として
人生の午後の充実と幸福を
時にあそび心を交えて
詠い上げた作品は
詠む者の心も
豊かに明るくしてくれる。
(帯・西村和子)

◆自選十二句
畳替足裏うれしくもたいなく
心柱その年輪の国の春
クリムトに微熱もらひてビール干す
木枯やガラス工房赤を吹き
母の日や母のきれいな笑ひ皺
運動会放送席の晴れがまし
小鳥来る人住む家も住まぬ家も
聖夜劇天使の羽の引つ掛かり
竹林の底を流るる寒気かな
フランスの切手嬉しき初便り
万緑や異形のものの潜みたる
エイプリルフール薔薇買つて帰りけり

成田うらら句集『水の扉』2014/11/13刊行

紫木蓮売れぬまま家朽ちてゆく
台風ののろのろときて人攫ふ
現実を直視して決して逃げることのない誠実な人柄。
風船を割る象の眼の笑ひけり
土雛のでんと座りし団子鼻
日常の緊張から解放され、ほっと笑いがこぼれる時間は、
何ものにもかえがたい喜びでもある。
人生山あり谷あり。だから俳句が楽しい。
行方克巳(帯文より)

冬ざるる境内に樹の声もなし
水に散る光の破片十二月
水槽の河豚や人間値踏みして
綿虫につきてゆきたし浮かみたし
噴水の笑ふがごとく泣くごとく
鹿の眼のむかう向き耳こちら向き
みづすまし水の扉を開きゆく
ハンカチの正方形を疑へり
風船を割る象の眼の笑ひけり
柘榴落つ神に愛想つかされて
(自選十句)

安倍川翔句集『今と決め』
2014/10/8刊行

熱燗や女盛りを今と決め

この一句に翔さんの心意気と潔い決断力がこめられている。
句集出版は、その「今」の記念だ。
今を大切に見のがさず、聞きのがさずに把えた人生のひと齣ひと齣は、
私たちの五感を大いに刺激してくれる。
西村和子(帯文より)

春昼のハーレムの辻乾きたる
草を刈る瞳の濃くて蜥蜴追ふ
生ビール星占ひを信じてる
かき氷ブルーハワイといふブルー
無表情くづれて涙心太
八月の島影ふつと消えにけり
十六夜や父の部屋その日々のまま
麦秋やふたりでひとつ旅鞄
女にも遊び心や日脚伸ぶ
永き日の二月堂より暮れにけり
(自選十句)